怪我の功名

先月の事。

いつもと同じ、朝日が照らす道を職場に向かう為、歩いていた。

信号が青に変わり、横断歩道を渡る。
あと少しで渡り切る所で乗用車が左折してくる。
が、減速する様子がない!

…人生で初めての交通事故にあった。
奇しくも13日の金曜日だった。

事故とは言っても、当たったのは多分サイドミラー。肘の辺りが少し痺れ、傷もかすった程度だった。

突っ込んできた車は少し離れた所で停車したが、運転手が降りてくる様子はない。

幸い下半身に異常は無さそうなので、このまま職場へ向かう事にした。

車が突っ込んできて動揺していたのもあるし、何より遅刻するのが一番厄介だ。

最小限の人員で回している故、この程度の怪我で迷惑は掛けられないし、イチイチ説明するのも面倒臭い。
 
「相手が私で感謝しな、コノヤロー」と一人悪態をつきつつ歩いていると、背後から「すいません!」と足音。

曰く、朝日が眩しく歩行者が見えなかったらしい。
相手も動揺していたようで、身体が小刻みに震えていた。

大した怪我ではないし、気にしないでください。
先を急いでますし、あとから警察に言ったりしませんから安心してください。 

許しを請おうと膝を折り、地面に手を着こうとするのを制して再び歩き出す。

少なくとも人にぶつかっておいて逃げおおせるような悪人ではなかった事にホッとしたし、この程度で済んで不幸中の幸いではないか。

何より今日は13日の金曜日である。

などと、何とかプラスに考えつつ無事(ではないね…)到着。

事故の事は黙っておこうと思ったけど、やっぱり痛いし、業務に支障がある可能性を考えて一応報告しておくことに。
 
車に轢かれたのにも関わらず遅刻もせずに出勤した責任感に溢れる私を褒めて!という、ちょっとした下心もある。

が、予想に反し(というか、そういう職場なのだった。なにを期待していたのか)返ってくる反応は概ね、

「何で連絡先を聞かないのか!後々になって後遺症が出て来るんだよ」というものばかり。

そんなの知らないよ…だって生まれて初めての交通事故だもの。
こんなにピンピンしてるし。

しかし周りの予言(というか一般常識)通り、後遺症は突然現れた!

つづく。