汗と涙と色々染み込んだ、彼奴にサヨナラ

「これが部屋から無くなったら、一体どんな光景になるんだろう」

という好奇心もあり、勢い(とは言っても衝動捨てではない)で2階の自室から狭い階段を経て、1階までやっとこさ引き摺り下ろした。

もう後戻りはできない。

「脚付きマットレス」です。

幼少期は「畳にお布団川の字」という、ザ古き良き日本人の就寝スタイルでしたが、小学校高学年になるとインテリアに俄然興味が湧き、「布団なんてダッサ!」とベッドに強烈な憧れを抱き、お隣さんから不要になったベッドを譲り受け、狂喜乱舞して天井に届かんばかりの大ジャンプを繰り返し、以来ずっとベッドと共にある生活を送ってきました。

今回手放したベッド(脚付きマットレス)は、3代目(3台目?)。

カビが気になっていたのです。

購入当時は、まだまだ汚部屋で、マットレスにカビが生えるとか、たまには干したりしてお手入れしないといけないなんて概念は持ち合わせていませんでした。

部屋が綺麗になってくると、自然と生成りマットレスにある汚れに目が行くように。

カバーで覆ってしまい、見た目だけは綺麗に繕って使い続ける選択肢もありましたが、

「カビの生えたベッドで寝ている」

という後ろ暗さに支配される日々。

寝具のみならず、家の至る所、カビと無縁の場所など無いのかもしれませんが、一度気になり出すと止まりません。

「寝起きがよろしくないのは、ベッド中に巣食ったカビその他諸々に睡眠を妨げられているからに違いない」なんて。

「これを機に、床に寝る生活にしようかな」
と思い悩んではいたものの、他の片付けなどをして何となく先延ばしにしていました。

そんな煮え切らぬ日々に終止符を打ったのは、我が家の愛猫。

ゴトゴト音がするのに、姿が見えないと不思議に思っていたら、いつの間にかマットレスの裏側の不織布を破り、中を隠れ家にしていたらしいのでした。

せっかく見つけたお気に入りの場所を取り上げてしまうのは可哀想でしたが、中のスポンジを食いちぎっているのを発見し、誤食しては一大事!と手放す事を決めました。

ベッドを部屋から運び出した後は、ご機嫌斜めで噛み付かれました(ベッドの件以外でもしょっちゅう噛まれてるけど)。

回収を待つ数日の間も、猫は名残り惜しげにニオイを嗅いでいた。

先代の猫が陽だまりの中でお昼寝していた大切な思い出も詰まっている。

長年使ってきた物とお別れをする時は、良い事もそうでない事も色々と思い出が蘇ってきて、やっぱり手放したくない気持ちになります。

手放すと決心したのに、揺らいでしまう。

自分は本当に、物に執着し過ぎる。

「自分を変えたいから、捨てるんだ」

と、泣く泣く手放した物の感触とか、ニオイとか、目の前に存在するみたいにありありと思い出す事ができます。

実際に変わっているかは、わからないけれど。

少なくとも、持ち物を徐々にダウンサイジングして「終活」に入っているのは確かです。

あの世には何も持っては行けないのだから。

念願の「トランクひとつ」へ向けて。

…とか言いつつ、敷布団のカビ対策として「すのこ」を購入してしまいましたが…。

という訳で、冒頭の「どんな光景が…」は、面積としては変わり映えほぼなしです。

願わくば、布団の類を一切持たずに、床に直に寝ても朝スッキリ目覚められるような、強靭な身体が欲しい!

あ、猫だ!

(ちなみに当方、「終活」にはまだちと早い、30代ですw)